Column

2016.12.31 11:01

フィル・コールソンという男〜影の”アベンジャー”〜

  • Aquila

アイアンマン、ソー、ハルク、そしてキャプテン・アメリカ……MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)では、今日もまたスーパーヒーローたちがスクリーンを駆け抜けている。彼らの華々しい活躍の陰には、ひとりの男の戦いがあった。

S.H.I.E.L.D.エージェント、フィル・コールソン。今回は、彼のたどった軌跡と共にその活躍を追っていこう。

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© 2008 MVLFFLLC. TM & © 2008 Marvel Entertainment.

2008年の『アイアンマン』にて初登場したフィル・コールソンは、戦略国土調停補強配備局の捜査官を名乗る。アフガニスタンから手作りのスーツで脱出したトニー・スタークに当時の状況を尋ねるのが目的であった。その後ペッパー・ポッツに要請され、5人の捜査官を引き連れてオバディア・ステインの秘密セクターを強襲。既にアイアンモンガー・アーマーを装着していたオバディアを目撃する。

トニーがオバディアを撃破すると、コールソンはアイアンマンの存在を世間に知られないよう証拠を消し、アリバイを作り、記者会見用の台本を仕立て上げた。この時コールソンは「略称がS.H.I.E.L.D.に決まった」とペッパーに告げているが、実際には1948年に設立と同時に決められた名称である(という設定は、後付けとも言えるが)ため、わざと長い名前で教えていたのはコールソンなりのジョーク、あるいはわざと長ったらしい名前を教えることで影の組織の名を正確に覚えさせないため(そして正式な協力関係のために略称を教えた)であったとも考えられる。

しかし、トニーはあろうことか「私がアイアンマンだ」と発表してしまう。この言葉を引き金として、それまで数十年の長きに渡ってS.H.I.E.L.D.が隠匿し続けてきた超常の秘密はぶち壊され、世界は大きく変わり始める。

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© 2010 Marvel & © 2010 MVLFFLLC

2010年の『アイアンマン2』では、アーク・リアクターが放出する毒素に苦しむトニー・スタークの監視役として任務に就く。トニーがパラジウムの代わりとなる新元素を作り出す手伝いをした後は、ニューメキシコに墜落した謎のハンマーの調査に赴いた。

続く2011年の『マイティ・ソー』では、謎のハンマーことムジョルニアをホークアイらと共に警護。そしてハンマーを取り戻しに地球にやって来たソーを尋問する。彼がパワーを取り戻すと、S.H.I.E.L.D.が押収していたジェーン・フォスターの研究資料と交換にアスガルドと同盟を結んだ。

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© 2011 MVLFFLLC. TM & © 2011 Marvel

そして2012年の『アベンジャーズ』。遥か宇宙の彼方から現れたロキと戦うため、アイアンマンとソーに加え、S.H.I.E.L.D.エージェントであるブラック・ウィドウ、天才科学者ブルース・バナーことハルク、そして70年の眠りから目覚めた伝説の英雄キャプテン・アメリカが集結する。

キャプテン・アメリカのファンだったというコールソンは興奮を隠しきれず、彼の新コスチュームをデザインし、ブロマイドにもサインを求める(実はキャプテンが目覚めた直後、フューリーの右腕であるコールソンも彼の保護と移送に関わっていた)。
スーパーパワーを持たないただの人間でありながら勇敢にロキに立ち向かったコールソンだったが、背後から彼の杖で胸を突き刺されてしまう。

彼の死が、バラバラだったヒーローたちを団結させ、”アベンジャーズ”として立ち上がらせたのだった。

元は映画のオリジナルキャラクターとして登場し、ユニバースの橋渡し役から短編映画(マーベル・ワンショット)やアニメ、そして”原典”たるコミックにまで逆輸入されるほどの人気キャラクターに成長したコールソンの物語は、ここで終わりを迎えるはずだったのだ。

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しかし、ファンはコールソンを呼び戻した。“Coulson Lives”である。

始まりは何人かの上げた小さな声に過ぎなかった。当時を知るファン諸兄姉なら既にご存知のことかもしれないが、それは凄まじい”熱”だった。世界中のファンがイベントで、アートで、そしてインターネットでコールソンの生存を望む声を上げるようになった。もちろんそれだけが復活のきっかけではないにせよ、コールソンを演じたクラーク・グレッグ氏ご本人も、ファンの声が担った役割は非常に大きかった、と数々のインタビューで発言している。コミックでキャラクターが生き返ることは数あれど、やはり映像作品で、ファンの声によって、というのは異例であることに違いない。

そして製作されたのがTVドラマシリーズ『エージェント・オブ・シールド』である。死んだと思われていたコールソンが謎の復活を遂げ、自らリクルートした精鋭チームを率いて再び世界の平和のため戦うのだ。”ニューヨークの戦い”を経験した世界では、既に常識は通用しない。スーパーパワーを持つ犯罪者や怪奇現象と、スパイ技術やテクノロジーで対決する。

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© 2013 ABC Studios & Marvel

筆者自身、一度死んだキャラクターが蘇る、ということに抵抗がないわけではない。死の悲しみを乗り越え、死者の想いを継いでいくことが物語のテーマとして扱われたならなおさらである。『エージェント・オブ・シールド』を観る前も、正直二の足を踏んでいた。

しかし、乱暴な言い方にはなるが、MCUという挑戦的な作品世界の中でコールソンが死から”蘇ってくれた”、”死者の復活”という”ありえないこと”を起こしてくれたことで、新しい可能性が生まれたとは考えられないだろうか。それまで現実世界の延長線上にあったMCUは、よりコミックで描かれるような超常世界に近付き、また世界観も大きな広がりを見せてくれた。

もちろん、「確かに死んだはずなのに、なぜ蘇ったのか?」という疑問を逆手に取り、劇中に立ち塞がる大きな謎としてちゃんと扱われるので安心してほしい。そしてまた、『エージェント・オブ・シールド』の作った土壌は『エージェント・カーター』やNetflixのオリジナル・ドラマシリーズの製作にも繋がっていった。MCU、”アース199999”は、ひとつのマーベル作品世界として立派に成長したのである。

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© 2016 MARVEL & ABC Studios

日本ではシーズン3、そして本国ではシーズン4を迎え、ますますその勢いを増す『エージェント・オブ・シールド』、そしてフィル・コールソン。いつかまた、アベンジャーズと肩を並べて戦ってくれる姿を心待ちにしながら、ファンの一人としていつまでも彼を応援し続けたい。

『マーベル エージェント・オブ・シールド 3』は、BSテレビ局Dlifeにて1月21日(土)より放送開始。

コールソンを演じたクラーク・グレッグ氏が初来日!インタビュー記事はこちら